デュピクセントは高い効果が期待できるアトピー注射薬です。一定の条件を満たせば自己注射ができ、通院の手間も省けることから、使用を検討している人もいるのではないでしょうか。一方で、「デュピクセントは高すぎるのでは?」「デュピクセントが効かないケースを知りたい」という人もいるかもしれません。

そこで今回は、デュピクセントの効果が高いといわれる理由やメリット、効かない人の特徴などを解説します。併せて、デュピクセントが高額であることや治療方針について当院の見解を紹介しますので、デュピクセントが気になっている人は、ぜひ参考にしてください。

デュピクセントの効果が高い理由

注射

アトピーで悩んでいる人は、一度はデュピクセントを聞いたことがあるでしょう。これほどまでにデュピクセントがよく知られている理由は、非常に効果が高いからです。

デュピクセントは、2018年にアトピー性皮膚炎の治療薬として日本で初めて認められた注射薬(生物学的製剤)です。従来の標準治療とは異なる新しい作用があるアトピーの特効薬として注目を集め、2019年には自己注射が認められました。

デュピクセントが生まれた背景には、熱心なアトピー研究があります。研究では、アトピーを悪化させる要因が見つかりました。その要因のなかで、特に、かゆみ・炎症・バリア機能を表示させている物質が見つかり、それに対する抗体を除去するのがデュピクセントなのです。この作用は、これまでにない非常に画期的なものでした。

デュピクセントを使用するメリット

注射

デュピクセントには、従来の標準治療にはないメリットがあります。標準治療はステロイド外用薬+保湿ケアが中心ですが、炎症が完全に収まる前に使用を中断すると、再発するおそれがあります。そのため、長期間にわたりこまめな外用薬を塗る必要があり、途中で治療を放棄してしまうケースも多いのです。

一方、デュピクセントは注射薬なので、標準治療ほどの手間はかかりません。使用することでアトピーのしつこい痒みなどから解放され、これまで我慢してできなかったことが楽しめるようになるでしょう。以下で、主なメリットを具体的に紹介します。

外用薬を塗る量や手間が省ける

先述したとおり、デュピクセントは注射薬なので、こまめに外用薬を塗る手間が省けます。外用薬のベタつきなどが気になる人にとっても、ストレスフリーな選択になるでしょう。

QOLが上がる

デュピクセントは、炎症や痒みの原因物質を抑えることで、症状を根本から和らげる注射薬です。使用することで、「かゆくて眠れない」「仕事や学業に集中できない」といった悩みも解決されるでしょう。

アトピーの症状が収まれば、露出の高いファッションを着たり、温泉やプールに入れたりと、それまで我慢していたことも存分に楽しめます。QOLが上がり、充実した毎日を過ごせるでしょう。

デュピクセントが効かない人の特徴

アトピー

デュピクセントは効果が高い注射薬ですが、いくら注射をしても症状が改善しない人がいます。これを医学用語で一次無効といいます。デュピクセントが効かない人は全体の2割程度いるといわれていますが、その原因は以下が考えられます。

注射が効かない体質だから

アトピーの人でも、デュピクセントが効かない体質の人がまれにいます。デュピクセントは打って3日目くらいから症状が改善され始め、2週間ごとに4ヶ月続けると、全体の4割程度において発疹がおさまるといわれています。

しかし、注射を打ってしばらく経っても効果が現れない場合は、注射が効かない体質である可能性が高いでしょう。

そもそもアトピーではないから

デュピクセントはアトピーに効果のある注射なので、そもそもアトピーでない人には効きません。アトピー以外の炎症である可能性が高いでしょう。継続して注射を打っても症状が改善しない場合はすみやかに注射を中止し、医師に再診を求めましょう。

デュピクセントは高すぎる?

医療費

デュピクセントの薬価は50万円以上し、標準治療よりも高額です。そのため、お金に余裕のある人しか受けられないと思われています。しかし、現実には受けたくても受けられない人がたくさんいます。当院はそのことを忘れず、アトピー患者様に寄り添っていきたいと思っています。

デュピクセントは最近開発された注射ということもあり、まだデータが十分にそろっていません。当院ではこれからデュピクセントのデータなどをきちんと揃え、副作用も含めたうえで今後どうなっていくのかということを、アトピー患者様に説明できたらと考えています。

デュピクセントの治療方針

患者に説明する医者

冒頭で述べたとおり、デュピクセントは非常に効果の高い注射薬です。そのため、「初診後すぐに受けたい」という人もいるかもしれません。

しかし、当院は、生活スタイルを整えながらステロイド外用薬を使用する標準治療から始め、それでも改善せず、もう頼る薬が何もない段階に達して初めてデュピクセントを使うべきだと考えています。その理由は、最初から使うとやめられなくなるからです。

デュピクセントの効果の高さは実証されていますが、実は、1年2年と続けた結果どうなるか、というデータはまだありません。

ステロイドは約70年の歴史のある薬です。しかし、いまだに「副作用がこわい」「使用量に気を付けるべき」などといわれていて議論が絶えないように、デュピクセントも10年後50年後、どうなっているかはわからないのです。

そのため、当院ではこの不十分なデータに対するリスクを鑑みながら、デュピクセントを用いていきたいと考えています。

デュピクセントの使用は正しく理解したうえで医者に相談を

注射を持つ医者

デュピクセントはアトピーに非常に効果がある、日本で初めて認められた注射薬です。使用すると症状が改善され、外用薬を塗る手間が省けたりQOLが上がったりするメリットがあります。

一方で、標準治療よりも高額であり、最初から使うとやめられなくなるというデメリットもあります。最近開発された薬であることから、まだデータが不十分であることも忘れてはならないポイントです。

デュピクセントの使用を希望する場合は以上を踏まえたうえで、まずは医者に相談しましょう。

豊田雅彦

監修者 豊田雅彦

富山医科薬科大学(現:富山大学)医学部卒業後、富山大学皮膚科講師を務めるかたわら、ボストン大学医学部皮膚科学教室、皮膚病理・電子顕微鏡部門に留学し、2005年に「うるおい皮ふ科クリニック」を開業。受診患者の99%(年間約3万人)の症状を軽減〜消失に導いた、世界有数の皮膚病・かゆみのスペシャリスト。『新しい皮膚の教科書―医学的に正しいケアと不調改善―』(池田書店)など著書多数。

経歴

  • 1990年

    富山医科薬科大学(現:富山大学)医学部卒業

  • 1994年~1996年

    米国ボストン大学医学皮膚科学教室に留学し、皮膚老化や神経など多彩な研究を行う。

  • 2003年

    富山大学皮膚科講師

  • 2005年〜

    うるおい皮ふ科クリニックを開業

所属学会・専門医など

  • 日本医師会

  • 千葉医師会

  • 松戸医師会

  • 東京慈恵会医科大学皮膚科非常勤講師

  • 日本皮膚科学会専門医

  • 日本アレルギー学会専門医

  • 日本皮膚かたち研究学会理事

  • 日本研究皮膚科学会評議員

  • 日本和漢医薬学会評議員

  • 日本臨床分子形態学会評議員  他

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ABOUT

アトピック

私が院長を務める「うるおい皮ふ科クリニック」では、
20年以上にわたりアトピーを中心とした治療に携わり、
多くの患者様のお声に耳を傾けてまいりました。

近年、外用薬を用いた対処療法に加えて
適切な知識に基づく根本的な体質改善を求める声が、
非常に増えております。

私たちはこのメディアを通じて、
一人でも多くの方がアトピーの苦しみから解放されるよう、
責任を持って正しい情報発信に取り組んでまいります。

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豊田 雅彦  院長

医療法人社団皮潤会
うるおい皮ふ科クリニック
豊田 雅彦 院長